ブルーバッジガイドとめぐるスコットランド
 フランツ・シューベルト ” アヴェ・マリア ” のルーツを訪ねて
 Visiting the roots of Franz Peter Schubert "Ave Maria "
 美しき国スコットランド   誰も行かない名所  その1

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2012年  5月のとある日
Yahooニュースのヘッドラインに”スコットランド独立か?” との表記。
2014年、秋に独立の是非をめぐって住民投票をするそうだ。
”そりゃ そうだ 違う国だもの” と思ったが、日本でこのニュースは埋没、やがて話題から消えた。
 
そんな、ある日、家に帰ると机の上に厚めの封筒がひとつ。

ロイヤルメールだ。

女王陛下なのかな。
金色のシールが雰囲気を醸し出している。

そういえば今年、エリザベス女王在位60周年だったね。
この人は元気だ。

   
ところで何でしょう
   
中身はスコットランドでの撮影をコーディネートしてくれたガイドさんから送られてきた本でした。

ブルーバッジガイドさんたちが共著でしたためたものらしく、スコットランドに関する話題が満載。

良いモノをいただきました。

Aさんありがとう。
 
ブルーバッジを持っているということはスコットランドにおける観光ガイドの最高峰であることを示すもの。この国に関する膨大な知識を2年かけて習得し最終試験に合格するとブルーバッジが付与される。現在、資格取得者300人のうち15人が日本人。
この本の著者には日本人ブルーバッジガイドの約半分が名を連ねている。
   

正直、驚くべき知識量でした。
様々なことをアドバイスしてもらい非常に助かりました。

この著者達はみんなそうなんでしょう。

通常の観光ガイドさんとはひと味違います。
こうした人たちに案内してもらえたら幸せですね。
 
どうやら、スコットランドで刊行された日本語の本のようです。 出版社の人はいろいろと苦労したでしょうね
おやアマゾンで取扱がありますね。興味ある方、下記リンクから手に入れてください。
http://www.amazon.co.jp/Insiders-Guide-Scotland-Japanese-Guides/dp/1908373113

私はイングランド(ロンドン)には行ったことがありますが、スコットランドはこの時が初めて。
番組タイアップの都合もあって空路は
羽田 → 関空 → イスタンブール → ロンドン → エディンバラ
 
なんとトランジットを含めて20時間を越え、ブラジルロケ以来、小笠原ロケに次ぐ3番目に長い移動時間となりました。
   
 
で、何しに行ったかというと、一つはスコットランドの詩人ロバート・バーンズ(1759-1796)の取材。
   
バーンズはスコットランド語での詩作で国民に広く愛される詩人ですが日本での知名度は今ひとつ。この時は「故郷の空」(夕空晴れて、秋風吹き)という曲の作詞者として取り上げています。
日本語の詩は美しいですが、原詩は「ライ麦畑で出逢うとき」(Comin' Thro' The Rye)という題名で少し猥雑な詩です。早い話がドリフターズの「誰かさんと誰かさん」(古!)の内容が原詩の雰囲気に近いようです。
 
 

もう一つは、こちらも現地では知らぬ人はいない詩人・作家のサー・ウォルター・スコット(1771-1832)の取材。

   
スコットは日本でいうと江戸時代後期の人ですが、スコットランドだけでなく諸外国でも広く認められた作家です。名前からも判るようにナイトの称号を賜っており、スコットランド銀行発行の全てのお札には彼の肖像画が描かれています。国民的詩人とうたわれた前述のロバート・バーンズと若き日に会う機会があり、多大な影響をうけた作家の一人です。

日本ではあまり書かれることはありませんが、スコットは幼少時のポリオウイルス感染により足が不自由でした。そうした事情もあって、ある程度足の自由が利くようになると多くの地を旅したと伝えられています。この旅の経験が彼の作品中に表れる風土や自然の描写に大きく影響していることは頭に入れておいた方がよさそうですね。一作品しか読んでいませんが、文章の根底を流れるのはスコットランド人の持つ規範や伝統を重んじる姿勢、そして自然への畏敬ということなのかもしれません。
 
 
全く関係ないように思えますがオーストリアの作曲家であるシューベルトの名曲「アヴェ・マリア」は、スコットの「湖上の美人」(The Lady of the Lake)という作品のドイツ語訳に曲を付けたモノです。

こちらの取材目的は元祖アヴェ・マリアの舞台を訪ねてということになります。


 
 
撮影に行ったのは首都エディンバラ以外に大きく分けて3カ所。
いずれも日本人観光客はあまり見かけることのない土地です。
この後の記述は、ほとんどコーディネーターさんからの受け売りです。 ハイ、私はこの国に関しては全くもって無知です。
   
   
まずひとつ目はスコットランド南西部のダンフリーズ

ロバート・バーンズゆかりの地です。

郊外には彼の農場があります。(エリスランド・ファーム)


ここはダンフリーズ・アンド・ガロウェイという地域になりますね。

後になってですが、この地域は「アニーローリー」という歌にも縁があるということを知りました。
これはコチラにまとめています。
   
次にスコティッシュ・ボーダーズ

イングランド国境に近い、南東部。
丘陵と川に恵まれた地です。

ウォルター・スコットがこよなく愛した風景です。
   
同じくスコティッシュ・ボーダーズ

スコットの幼少期を追ってここに来ました。
彼はここで親戚の助けを借りながら脚力の回復を試みることに。
エディンバラを離れて初めて自然と触れった原点の地です。

この付近はガイドさんやドライバーさんの言葉を借りると
” 荒涼たる大地” なのだそうです。

実は私、この景色、好きです。
 
そして今回のハイライト、 「湖上の美人」の舞台、カトリーン湖。


スコットランド北部のハイランド・カウンシル・エリアに近く、
俗にいうハイランド地方の入り口です。
湖の風景はスコットが訪れた当時とさして変わっていないでしょう。

ずーっと北のほうに行くと”ネッシー”で有名な「ネス湖」があります。

スコットがあまりにも美しく描いたため、この辺りの観光名所となっていますが、日本人で行く人は少ないでしょうね。自然の風景しかないからです。
また日本では「湖上の美人」が手に入れにくいという事情もあります。
こちらは古い書籍の写しが国会図書館にアーカイブされています。
文体が古くて読みにくいですが、タダです。ロケ前に読んでみました。

名作ですヨ。
   
   
カトリーン湖のパンフレットには、
下記の一節が 紹介されていました。
 
   
モノの形を一切述べることなく、色彩と自然の息吹をもって夏の曙を描写したスコットならではの美しい一節です。
   

The Summer dawn’s reflected hue
To purple changed Loch Katrine blue;
Mildly and soft the western breeze
Just kissed the lake, just stirred the trees,

夏の愁明の光はカトリーン湖に映って、
碧色の水を紫色に変えた。
そよ吹く西風は、今しも静かに湖水に接吻し、
木立を揺り動かした。              (幡谷正雄 訳)

 
 
これがカトリーン湖に浮かぶ「エレンの小島」です。

アヴェ・マリアはここで主人公エレンによって歌われます。
といっても、文中では詩になっているだけですが。

シューベルトが作曲したアヴェ・マリアの正式名称は

《歌曲集「湖上の美人」》から「エレンの歌」第3番
作品52-6(D.839)

です。

これだと、スコットとのつながりが解かりやすいですね。
   
   
Ave Maria! Maiden mild!
Oh listen to a maiden's prayer;
For thou canst hear tho' from the wild,
And Thou canst save amid despair.
Safe may we sleep beneath thy care
Tho' banish'd outcast and reviled,
Oh, Maiden hear a maidens prayer.
Oh Mother, hear a suppliant child!
Ave Maria!
《Hymn to the Virgin》 と 題された詩の第一節です。
こちらがスコットのオリジナル。

シューベルトはこのドイツ語訳に曲をつけたわけですネ。
   

ウォルター・スコット邸(メルローズ近郊、アボッツフォード邸)

「湖上の美人」で一躍著名となったスコットは、ボーダーズでの理想の生活を自らの屋敷で具現化しようとします。

しかし夢も長くは続きませんでした。

人生の終盤に不幸に見舞われ
スコットはこの屋敷で最期を迎えることになります。


 
岩波文庫のアーヴィング著 『ウォルター・スコット邸訪問記』 に当時の様子が詳しく描かれています。
どちらかと言えば本文より脚注のほうが面白いです。 これも出発前に読んでいきました。
こちらはアマゾンで手に入ります。コピペで検索してみてください。
 
と、このあたりは「スコットランド こぼれ話」でもしっかりと押さえられていて私の出る幕ではなさそう。
この本は単なる旅行者の体験記とは違い、現地で暮らすガイドさん達の知恵と経験がギッシリと詰まっています。
優秀なブルーバッジガイドさんに支えられた撮影旅行は安心で楽しいものとなりました。

   

 


エディンバラやネス湖しか知らないという人には、是非読んでもらいたい本です。

少し日本から遠いですが、私たちが知らなさすぎということがありますね。

 
わたし的には再度撮影に行くことがあればストーンサークルといったミステリーゾーンにも踏み込んでみたい気もします。
最初にも書きましたがココはイングランドとは違う国です。
独自の文化、感性を長く守り続けていることに彼らの誇りを感じます。
 
スコットランドは人の心も風景も美しいところです。
カメラマンとしてはコロコロ変わる天候が少し恨めしいところですが、まあ、バリーエーション豊富ということでいいでしょう。
 
このガイドさん達にアドバイスしてもらって時期を上手く選べば、キレイな写真が撮れますヨ。
 
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