BTS規格の呪縛
逆さまだったXLRレセプタクルの入れ替え

 
これは長いこと収録現場で使ったミキサーです。

日本ビデオシステム(下段、プロテック)とシグマシステムエンジニアリング(上段、KAMESANの最安ミキサー)の3チャンネルタイプです。この手の製品はやソニーなど、あと数社が作っていますが、日本の映像業界的にはこの2社の製品をよく見かけますネ。海外製品ではシュアー、WENDT(ウエンツ)やSound Devicesなども優秀なようですが、国内ではかなり少数だと思われます。特に多いのが放送ロケ音声収録の定番といえるシグマのSS-302シリーズです。上段のシグマはその廉価版SS-T2000(後期型のKSではありません)です。

この2台で比較すると、造りの頑健さはややシグマが上回りますが、機能の豊富さでは価格の高いプロテックが上です。シグマは放送業界に強く、プロテックは業務撮影全般に使われています。シグマの高級機ともなれば入出力が増え、今ではレコーダー機能を持つものもあります。でもキホン、レベルが整った音声をカメラに供給するのが役割です。ここでは3chでメータが一つなのか二つなのかが、機種の性格を物語っています。

カメラの次は音声機材だ、ということで、かなり前に清水の舞台から飛び降りるつもりで手に入れたものです。
どちらも故障知らずで、よく働いてくれました。いえいえ過去形でなく、働いてくれてます。
 
 
ブロックダイヤグラムをみると、プロテックは入力側にトランス、シグマは出力側にトランスが使用されています。
トランスで入出力を切り離すという強みがあり、他機器との接続で起こる弊害をシャットアウトできます、また基本的に電池駆動なので電源関係のノイズは考えなくていいです。
   

これはプロテックのブロックダイヤグラムの入力部です。(クリックで全体)

トランスを使ううえ+4dB入出力対応なので、周波数特性はオーディオ機器とまではいきませんが、50Hz以下を除く可聴帯域はほぼフラットです。

ENG取材では低い周波数の環境音をカットすることが多く、この特性はハンデにはなりません。一番シンプルなシグマのミキサーでもローカットフィルターはついています。つまり人の声中心なのですね。シグマのミキサーはインタビュー目的で導入しました。
 
 
現場ではMKH-416やSM-63L、またワイヤレス受信機のマイクアンプとして良く使われ、他にライン音声の供給を受けることもあります。MKH-416やSM-63Lの個性が際立っているので、ミキサーの音質うんぬんよりも機能的な部分だけが重視されますがオーディオ的にみると、おとなしいですが意外といい音です。メータが二つあるプロテックのミキサーはステレオ収録向き。客席からの音楽収音でも上手く録ればビデオ的には問題ないです。
 

 
俗に「フィールドミキサー」とか「ポータブルミキサー」といったりしますが、ENGの現場的には単なる「ミキサー」で通じます。
ホントは「フィールドミキサー」はプロテックの商標、シグマは「コンパクトオーディオミキサー」です。どちらも現場でも使わない呼び名ですネ。
 
これなぜか入出力のコネクターがAタイプ、Bタイプの2種類あって、放送のENGに使われるのはBタイプが多いです。
(今の時代オスメスという呼び方はどうか、という議論もありますが英語でもMaleとfemaleですからさして変わらないようです。いまのところ現場の呼称としては一番意味が通じる呼び方ではないかと思います。より良い呼び方があればご教授ください)
 
Aタイプ = 入力メス(XRL-F)、出力オス(XLR-M)、音響設備からいえばこれが普通。
Bタイプ = 入力オス(XRL-M)、出力メス(XLR-F)、ENG現場からいえばこれが常識。というか他は知らない。


取説もBタイプで示されています。   こちらがINのオスコネクター
 
(C)日本ビデオシステム

OUTのメスコネクター

 
(C)日本ビデオシステム
 
電気の立場でいうと、電力の生じている側がメス。負荷の掛かるほうがオス。というのが原則のようで、カメラ電源などに使うキャノン4ピン出力はメス端子で出ています。これは一種当然で出力がオスだと接触で感電やショートの危険性があるからです。上図XLRメスの右横にある4ピンXLRがオスなのは電源入力だからです。ミキサーは電気を使用します、ので、負荷の掛かるほうだからオス。平たく言えば出力側がメスで入力側がオス。これが電気の常識らしいです。
 
音響では音の入り口であるマイクが出力オスとなっている関係でAタイプ(入力がメス)以外考えられません。音圧の入力があるところがメスという概念からいけばマイクの出口はオスで、これはこれで納得できます。が、少し電気接続の常識からは逸脱するようです。ファンタム電源は入力側から供給されるためメス出力。と、これは電気の理屈にたまたま合ったようです。出力側がオスで入力側がメス。これ音響の常識
 
でも、ホールなどでは音響出力がメスレセプタクルになっていることがあります。壁面に設けられたレセプタクルにピンが露出するオスは似合いませんね。この辺は電気の常識に従うのが理に適うのでしょうか。
 

 
では、放送取材で使われるオスメス逆のBタイプは何なのでしょうか? 
 
マイク出力オス → ミキサー入力オス → ミキサー出力メス → 他の音響設備入力メス という具合になり、ケーブルも入力側はメス-メス、出力側はオス-オスで作らなくてはなりません。そのためオスメスのノーマルケーブルは使うことがありませんでした。これは繋げるようにしか繋げないのでそれなりに利点はありますが、音響の常識に慣れた人から見れば奇異に映るでしょうね。特にファンタムがオスから出ているので結線後にONしないとショートの危険性はあります。
これは電気の常識を元にしたBTS(Broadcasters Technical Standard)規格の名残だそうです。
 
すごいですね、Wikiの説明には歴史的にGHQとか出てきますが、簡単に言えばかつてのNHKの納品技術基準ですね。
この規格、日本国内のみで通用してきたガラパゴス規格です。
 
で、ここではマイク出力がオスなんてスタンダードは無視です。
 
BTSマイクの名機 SONY C-38Bは(落語で見かけるアレです)XLR-3-11Cなのでメス出力です。

ですからノーマルなXLRケーブルを使うとミキサー側のレセプタクルはオス入力が好ましいことになります。C-38のようなBTS規格製品に準拠して作られたのが放送用Bタイプのポータブルミキサーということですね。

局内のコンソール事情には詳しくはないですけれど、すでに音響の常識で揃えてあるでしょう。つまり今やENG収録の一部現場だけオスメスが反転しています。一般機器との接続はケーブルのコネクターで整えるしかありません。
(C)ソニー
 
機械ものですから。5、60年もたてば古臭くなることは当たり前、放送機器のデジタル化が全盛となった2001年にBTS規格は廃止されています。
 
でも、放送の世界、ENGの世界ではENGミキサーにまだBTSの呪縛が残っていて、今でもBタイプのほうが先に売り切れるほどです。
これからの人はこだわることはないですが、私がミキサーを手に入れた時は、Bタイプが普通でした。「キャノンコネクター、逆じゃネ。」と不思議に思いながら急ぎでミキサーに合わせてXLRケーブルを作ったことを覚えています。この頃、すでにカメラの入力はメスに変わってましたからヘンですネ。
でも、もう長くはないでしょうね。今の若者にはまったく関係ないからです。新しい機器は音響の常識に従って作られ、入出力のレセプタクルもピンアサインも2番ホットに統一されました。もう合理的に考える時ですね。
 
BTS廃止を受けて、2001年当たりを境にキャノン端子のオスメスが逆になったカメラやデッキが多くあります。すでにカメラはファンタム48Vが出るようになってからはメスが標準になってました。この辺でやっと音響の常識に近づいてきたようですネ。

またこの頃は白色ホット青コールドのケーブルが主で、コネクターグランドをキチンととっていました。が、数年経って逆転し、今では有色ホット(つまり青白なら青)でコネクターグランドも結線しないというケーブルが多いようです。PA関係では「コネクターグランドはとらない」というのが常識のようです。有色ホットはいいとして、放送ENG関係のケーブル作りでは、今もコネクターグランドをしっかりとるように指導する人が多いです。ENGの場合は接続する機器が限定されていますので、コネクターグランドがあったほうがいいとする意見が多数ですね。アースループを考慮すると一長一短ですが、グランドを繋げておいて問題あれば現場のニッパで切るというのも一つの正解のように思います。知識が完璧で現象に対処できる能力があるなら、もう思想の問題になりますよね。
 

 
SDデジタルカムコーダー DSR-500WS/1の後部端子群(2001年製)1394端子やら26ピンカメラ端子とか、懐かしいですね~。
チャンネル1が左(L)でメイン、チャンネル2が右(R)でサブというENG音声の常識は、このようなショルダータイプのカメラから引き継がれています。物理的なレイアウトとLRチャンネルが一致するので間違えないですね。左が1チャン・メインです。これを覚えておけば悩むことはありませんでした。でもこれも時代とともに薄れていくのかもしれません。
また4ピンの電源用キャノンには特殊なピンがつけられケーブルを刺すとこの外部電源がONするようになっています。これは特殊なレセプタクルですね。
1/3最新型NX5RのXLR入力のレイアウト
ハンディカメラのスタンダード、レンズ側が1チャン。

ハンディカメラの大半はレンズ側がチャンネル1(L)とボディ側がチャンネル2(R)なので結線が直観的ではありません。最初のころ私はよく間違えました。
1型4Kカメラ Z150のXLR入力レイアウト
最近テストしたHDのNX100や4KのZ150がなぜか逆で、ショルダータイプのようになっていましす。これを見るとメーカーの都合によるようですね。

このカメラはショルダーカメラのように左(L)が1チャン。

同じソニー業務用カメラです。業務カメラのグローバルスタンダード、ソニーのポリシーはいったい何処へ?

この2機種はシリーズが異なるもののNX100とZ150は同じ筐体を使っています。NX100の設計者はショルダーカメラ設計の経験者ですかね。
 
 

 
さて、最近長尺ケーブルを使うことが増えたため、延長ケーブル系はすべてオスメスのノーマルタイプに取り替えました。
なんと100m以上あります。一人で扱う長さじゃないよね。整理しないとね。
 
接続はオスメス変換ケーブルで対処してましたが、なかなか不自然なことになっていました。
 
 
で、今回長らく使ったBタイプに別れを告げ、ミキサーの端子をAタイプへ変更する決心をしました。
あ、なに、端子を入れ替えるだけの事です。
アキバのマルツでITTのレセプタクルが一個100円で売られていました。ジャンク扱いなのですがハンダも付いてない新品です。コネクターの入れ替えを思い立ったのもマルツの店頭に置かれていたこのコネクターにあります。
 
とりあえず、コネクターのネジを緩めてみます。
 
 
ネジ穴はタップで切ってあるタイプです。ナットの脱落事故がないようにということでしょう。
一番よく使うチャンネル1は以前コネクターがゆるみ、受け側のネジ穴がバカになったため、泣く泣くナットを入れて回り止めで固定した覚えがあります。なので簡単には外れません。たぶん苦労するだろうなという予感はあります。トホホ、壊さなければよいけれど。
 
XLRの取り付け穴はAタイプ、Bタイプとも両側共通のようで入替可能です。両方販売してるってのはそういうことなんですよね。
 
 
なにやら入力側にセラミックコンデンサーがついてますね。
47pFが2番3番から1番とコネクタグランドに落ちています。B帯ワイヤレス(800MHz帯)の飛び込み防止でしょうか。

で、今日はここまでにして、コンデンサー外しに失敗したときのため、47pFを6個用意することにしました。
 

 
 
それでは、アキバへGOです。

 
今回はこれでオシマイ
 
次回へ続く
 
2016年11月
 
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