AT9943 民生用ワンポイントステレオマイクのXLRケーブル
2014年11月30日 導入部分の文章が冗長だったため、一部削除しました。

今回はロケで楽音をステレオ収録することがターゲット。

バックアップレコーダー用に良い音をお手軽に録れるステレオマイクが必要となった。

通常のテレビ的なサウンドでいいなら、MKH416を2本使ったORTFセッティングで済ませてしまうことが多い。
416は周囲の雑音をカットするには良いガンマイクだが、当然指向性が強すぎて、近距離でのステレオ収録は中抜けする可能性がある。

安価な民生機で良いものはないか?

なんやかんやで、候補に挙がったのは RODE NT4 と オーディオテクニカ AT9943
NT4は10年以上前、AT9943は約5年前に発売されたマイク。

どちらも、モノラルとの互換性に優れるXY方式のワンポイントステレオマイクだね。

ただNT4は外径が太く、カメラマイクのホルダーには装着できない。
カメラマイクを、そのまま付け替えるには21mmほどの外径が望ましい。

というわけで、オーディオテクニカ AT9943 を試してみることに。

あ、音鉄 するわけでは、ありません。 その方面の人には評判がいい、と聞いてはいます。


民生用のワンポイントステレオマイクを手にするのは、久方ぶり。

ナマ録全盛時代、中野坂下から新宿に向かう道すがらにあった質屋の店頭に、ビクターのKD-2というポータブルカセットデッキが並んでいるのをみて、1週間悩んで中古購入。それにソニーのECM-990(だったかな?こちらも質流れ)というマイクを組み合わせ友人の演奏などを録音していた。それ以来だ。
カセットの時代で、音はソコソコだったが録音することが楽しかった。 やはり録るものがあったからいいんだね。

カプセルには簡易なショックアブゾーバーが装備されていて、多少の振動には耐えられそうだ。

公称16mm径のダイヤフラムなので低音はいいが、おそらく“吹かれ”には弱い。
ローカットスイッチが用意され、“吹かれ”防止用のウインドマフも付属するが、屋外では少々神経を遣った方がよさそうだ。

アッティネータもなく、耐入力にもやや不安があるが、こちらは爆音テストをして具合をみることにする。
ファンタムには対応しておらず、単3電池一本が本体に収まる仕様。
ファンタムをONにすると、音はでなかった。
ショート状態になるので、 あたりまえか。(機材保護のため長いことONにしないほうがいいです)

電池を入れておけば、プラグインパワーのDCはカットされるもよう。
どこか直列にコンデンサーが入っているはずだから、まあ、そうだよね。

接続は、とみると、なんとキャノンの3ピン。
ステレオでバランスならフツー5ピンだろう。

ということは、バランスではなく、アンバランス伝送だ。あんまりケーブルは引きまわせそうにないネ。
頑張っても5m~10m程度に控えておいたほうが安全かとは思う。 これはマイクレベルだから。

実はアンバランスでもラインレベルであれば、現場でキャノンケーブルを50mほど引き回すことはある。
-10dB程度の民生出力でも、電源ラインとの交差などに気をつければ大きな問題は起こらない。
収録機器と距離が離れる場合は、マイクサイドにミキサーもしくはマイクプリを置いて、+4dBレベルまで増幅して送った方が良い結果となるのは、皆さんご存じのとおり。
またキャノンコネクターを備える業務用ミキサーやマイクプリなら、この時点でバランス伝送となるので、ノイズ的にはぐっと有利になる。

伝送形式とは別の話だが、 手持ちの録音機、ミキサー、カメラともバランス受けキャノン3Pの機材なので、 このままでは接続性がよろしくない。

付属ケーブルの結線をテスターであたる。

民生機の例にもれず、ハンダはあまりいい状態ではないね。
最初にマイクを接続したとき、接触不良によると思われるノイズが出た。
おまけにケーブルの根本を結んであるので、ケーブルを締め付ける部品が正規の位置になってなかった。

こちらの付属ケーブルは、再ハンダの必要がありそう。

○ コネクターのグランドは結線されている。(バランス結線ではないからね)


通常のバランス結線と、AT9943のマイク出力の違いは以下のとおり。
単なるアンバランスなのだが、3ピンのキャノンコネクターを使っている時点で混乱を招く要素はある。
(単なるコネクターとしてみれば、3極、5極による音声の平衡接続以外、厳密なキマリはないんだけどね)
ただ延長が3Pキャノンケーブル一本で済むところが利点か。でも、長く引き回すとノイズを拾う可能性はある。

給電ラインを除けば、信号の伝送形式としては、我々が使う業務用ピンマイクと同じ。
経験上、ケーブルが短めなら問題はまずでない。

普段、音響機器を扱う仕事をしている人にとっては、仕組みはすぐ分かるんだけれども、
通常ユーザーは迷う人も多いだろうね。こういう仕様はメーカーが公開した方がいいね。
というわけで、作るか。

ノイトリックのコネクターを用意。キャップも買ってきて色分けを試みる。

仕事用には回すだけで外れるノイトリックを使う。バラスのにドライバーがいらないので、現場でのトラブルに素早く対処出来る。
コネクターは 汚れによる接触不良が避けられ、メンテも簡単な金メッキタイプとした。
(というか、ノイトリックは新旧とも、このタイプしか買ったことない。他にあるのかな?)
結構、高いんだよね。ケーブル入れて、1,800円くらい。
あとケーブル外径を5mm程度に押さえないとメス側のスリーブに2本入りません。

ここ数年、コネクター類は秋葉原のラジオ会館にあるトモカ電気での調達だったが、ここしばらく工事中。そのためラジオデパートで営業しているトモカに向かう。

ここの店主は無口で、なかなか近寄りがたい。見かけによらず優しい人かもしれず、言えば相談には乗ってくれるかもしれないが、なかなか声をかける雰囲気でもなく、その勇気もでない。
いくら投資したら微笑んでくれるようになるのだろうか。謎である。

ラジオ会館は建て替えられ、今月新規オープンするようだ。
オーディオ全盛期にはずいぶんお世話になったが、 最近はビルの名前とはかけ離れ、マニア向けのフィギアを扱う店舗が多い。気恥ずかしくて、オジさん的には少々出入りしにくくなっていた。
でもトモカも営業再開するようだし、コソコソしながらコネクターやらケーブルやら買いに行くことになるだろうね。

結線は、下図の通り、ですね。

コネクターへのシールドは、純正ITTキャノンXLRの構造から、グランドを落とすのはメスのみでオスは落とさない、
というのが、かつてのキマリらしい。(ITTコネクターXLRのオスは落とすトコロがない。ただしXLAという廉価版は落とせるようになってる。XLAはコンタクトピンを支えるプラスチックが熱に弱いように思う)

が、ノイトリックはどちらもグランドに落とせるようになっているので、メスもオスも遠慮なく落としています。

近年シャーシアースとケーブルアースを切り離している機材が増えているので、無理に結線しなくともいいのですが、一応やっておくことに。

グランドをコネクターケースと共通化するか、フローティングするかは、相手方機材よって結果が異なります。
こちらは手元の機材に実際につないだ状態で判断することにしました。通常はこれで大丈夫。

これで録音機側とマイクケース側のグランド電位は一緒になっています。現場で不都合あったら切り離すことにします。

初出時、1番とコネクターグランド及び2番を接続しておりましたが、最初のつなぎ方では機器によりノイズを拾うことがあるということが判りました。またトランス入力の機器では音質が変化してしまいます。よってレコーダー側の1番と3番を結線することにしました。最初から普通にしておけばよかった訳です。こうしておけばトランス入力にも対応しますね。電子バランス入力の機種でも問題がなければ1番3番結線でいいと思います。
本来のバランス伝送ではキャノンコネクター部分をグランドに落とすか落とさないかは、現場によって意見が分かれるところ。
何10本ものケーブルがステージ上を走るPAの現場では、ケースシールドはトラブルのもとになるので落とさないのが常識らしい。
私なども接続がシンプルなENGなどではノイトリックを使い出し受けともケースシールドしてきたのだが、新規でキャノンケーブルを作る際はもうケースをグランドに落とすことはしていない。

最近、市販のケーブル(TOMOCA)などでもグランドは落とさないのが普通になった。
これはPCとの接続が増えたことによりシャーシアースとケーブルアースを切り離していたほうが有利ということだろう。

ということでケーブルの作成は完了。
機材直前でLR分けするように分岐ケーブルは30cm程度としました。

マイクから分岐ケーブルまでは通常の3ピンXLRを使う予定です。


XYの角度は120°と90°が可能です。が、収納用でしょうか、なぜか内側に180°まで倒れてしまいます。
XYで180°はアンビエンス用途ですね。
 おや、それも考えての設計か。

ウインドマフを装着するときに簡単に動いてしまうので、ここはロック機構がほしかったですね。

結局のところ、撮影には欠かせないパーマセル・テープで120°に固定。 もちろん普通のテープでも固定できるが、短期間なら糊の跡がつかないので便利。

電源スイッチとローカットは共用タイプ。うーん、やはりマイクプリアンプ部に-10dB程度のパッドがほしいナー。
これはカメラ側のプリゲインを調整することに。今の業務用カメラは、たいがい10dB程度の設定はできます。
あとは爆音でマイク本体が歪まないことを祈るのみ。
作成したケーブルは、録音機、ミキサー、カメラとの接続も問題なし。

あとは使ってみて、ノイズを拾うことがあるかどうか、確認してみたいと思います。

音を聞いてみたところ、クセもなく素直な感じがする。
まあ、個性が少ないのがテクニカマイクの特徴。 これでいいでしょう。

指向性マイクなので、低音は当然だら下がり気味なのだろうが、低域の量感はすごい。

民生機ながら上手くできているなと思った。

私が良くテストする小型業務用カメラなんかも、そうなんですが、
耐久性や使い勝手以外は、もう民生機も業務機も変わらないかもしれないですね。
ただ価格差は厳然としてあるので、上手く使えば元はとれそうです。

条件のいい室内ならば、十分なパフォーマンスを発揮してくれそうです。

ハイ、私のロケ用ミキサーは2台ともオスメスが逆のタイプなので、今回のケーブルを使うには変換が必要です。

(カメラ側にファンタム電源が装備されてなかった頃の歴史的名残。ケーブルもすべてこれに合わせて作ってあります。利点は繋がるようにしか、繋がらないこと。マイクからカメラまでの間、オス-メスのケーブルは使用しないので、間違ってもミキサーをスルーできない)

というか、メスーメスタイプも作ればいいんだよね。

2000年頃を境に業務用機器のキャノンコネクターは、入力=メス、出力=オス、に統一されつつあります。
こちらのほうが合理的ですね。(BTS規格が2001年に廃止となったのも関係しているようです)

イマドキのデジタルレコーダーや業務用カメラは当然メス受けなので、普通に接続できます。

写真のようなコンボ入力ジャック端子を備えた機材なら、付属のケーブルでも同じことです。
ただ、ロック機構付ならばキャノンのほうが頑丈。XLRケーブルさえ太ければ、機材をつり上げることもできる。
シールドのハンダ付けをしっかりやっておくことが、重要。 と昔、録音部さんが言っていた。

後は実際の楽音を録るだけです。

それまでのテストは、やっぱ、音鉄か。

一度録れば、大体のことは分かるかなーと思います。
2014 July, 10

7月14日追記 (RODEのピストルグリップPG2に装着、
                   TASCAMのDR-07を使用して京浜東北線で録り鉄)

○ 付属のウインドマフは1m程度の弱風なら有効。風に揺れる木々のざわめきもOK。
   風の強いときはライコートなどのカゴ(風防)が必要。
   小さなウインドマフでも、バッグからはみ出ていると乗客の冷たい視線を浴びる。
   ショックアブゾーバーはライコートのラバーマウントタイプかRODEのPG2で十分。
   これなら竿でも手持ちでも、よほど激しく揺らさない限りOK。
   RODE PG2は安価でオススメ。
   マイク外径によって2つのショックマウントがついてくるので、 19-22mmまで対応できる。

○ 120°の設定は指向角の範囲ぎりぎりに感じます。  
   音源までの距離によりますが90°が無難なようです。

○ 残留ノイズは低音の量感にマスクされ、オープンでは問題にならないレベル。
   再ハンダを施した付属ケーブルでは、交流架線によるノイズは
   今回認識できませんでした。短いし。
   ただ3.5mmのプラグは、はずれやしないかと神経を遣いますね。

○ MKH416などのRFバイアスのマイクと比べてしまうと、
   音質にやや張りがない。これは比べるのが酷か。
   オフマイク時は音場の明瞭さに欠け、ややフラット気味に感じる。
   これは120°に広げたからかな。
   音の狙いを絞って、明快にすべきなんだろうね。
   解像感はバックエレクトレットの域をでない。

○  DR-07レベルのマイクプリでは力不足。もう一段格上のレコーダーが必要。
   本番はフィールドミキサー→カメラ、もしくは、R-44で臨みます。

○ 方式上、ステレオ感がやや弱い感じもするが、価格からみれば立派な音質で
   ビデオの簡易収録用にはもってこい。ただし、オンマイクが前提。
  
   以上、テスト結果でした。



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