JVC KENWOOD

GY-HM650
数日間、試用させてもらいました。
その後、JVC KENWOODの本社に出向いて、いろいろな質問をし、開発時のお話などを聞いてきました。
厳しい質問にも正直に、そして隠すことなく答えてくれた開発者の皆様。ありがとうございました。
多くの小型業務用カメラをテストする機会に恵まれて感謝するこの頃です。
良いカメラを作ってくれる人たちがいないと、私たちカメラマンも仕事になりませんネ。

カメラの特徴とポジショニング:

さて、GY-HM650ですが、特徴を一言でいってしまうと「プログラマブル」 (programmable)なのだそうです。
通常はハードウェアで固定してしまう回路部分もプログラムする余地を残してあり、書き換えによって、
ある程度進化していくことが出来るというコトですね。
プログラマブルロジックデバイスなる集積回路を多用しているとのこと。
まさに「成長する」カメラです。

最新情報: 新しいバージョンのファームウェアが発表されました。(Ver.2) 2013/03/22追記
4G LTEモデムをドッキングして収録しながらストリーミング送信が可能になったそうです。
そういえば、局の関係者からファイル転送中の録画について強い要望があったと話をされてましたね。
下準備はあったにせよ、私たちに明かしてからおよそ一ヶ月で実現したわけです。NAB2013でお披露目されるようですが、日本で実現するか不明です。

ズーム倍率、感度などは現時点で他社の同クラスより一つ上を狙う仕様になっています。
JVCはこのクラスのカメラが長きにわたって不在でした。商売的にも大きなボリュームゾーンに参入という形です。
後発メーカーの初号機としてみれば健闘しているといっていいでしょう。

本体部分は上位機種のノウハウ+新コーデックということになります。
HDの業務機で1/3型一体型のAFレンズはJVC初の試みでしょうか。ちなみにレンズ部分はFUJINON製です。
重量も他社同クラスに比べ軽くなるように設計した、とのこと。グリップしたときの重量バランスもよく練られています。
奥は私の凍結機材、GY-HD100(HDV 720P) ブランドロゴがまだVictorです。
JVCにおけるHDの系譜はこのGY-HD100から始まっているのだそうです。
画質を司る開発者は、なんと、どちらも同じ人物でした。

本体のボタンやスイッチは一部を除き他社のレンズ一体型機に良く似たレイアウトになっています。
ショルダーのENG機がカメラマン達の意見を取り入れ、ほぼ同様の配置となっていったように、レンズ一体型も各社同じような感じになってきました。
感度切替レバーはホワイトバランススイッチとは形状が違い、手探りでも判別できるような配慮がなされています。
放送用ENGカメラに慣れている人は位置で判りますね。
いくつかのボタンは通常の押す操作と、長押しの操作で挙動が変わります。よく考えられています。

ニュートラル・デンシティ・フィルターは3段。ほんとは1/128も付けたい気持ちもあるのですが、調達が不可能で実現していないそうです。

端付きのズームリングは適度な粘りを持っていて、いい感じ。
機械式でなく電子式ですのでマニュアル時にも若干のタイムラグがあります。
バラエティー番組などで使われるカットのようなズームはできませんが、電子式の利点を活かして、イーズアウト、イーズインが内部的に設定されているようです。そのため少々乱暴なズームをしてもズーム終わりがキレイに収まります。
サーボ側に切り替えると、マニュアルのリングは動くけれど画角は変わらない、というようになっています。

フォーカスリングは局関係のカメラマンからフィードバックを受けただけあって、ENGレンズと比べても違和感のないフィーリング。レンズ全体の操作感は上々ではないかと思います。


F11という感度について:

HM650はビデオゲインに関して、2000lx/F8の標準と2000lx/F11の拡張という2つのモードをもちます。(新ファームで600にも追加されたようです)
標準の0dBは拡張の-6dBという関係で、出荷時デフォルトでは標準モードとなっています。
F11というのは拡張モードの0dBで計測された2000lx時のカタログ値です。
店頭で ”それほど明るくないじゃん”(静岡弁でスミマセン)と感じた人は標準モードだった可能性があります。

2000lx / 50%反射時の簡易実測


標準と拡張の感度差だけを調べたかったので50%反射で計測しました。
(元映画屋さんだということもあります。フィルムの感度計測は50%反射で行うのが通例なので露出計を手にすると89.9%反射を計るのをなぜか忘れてしまいます)

簡易計測手順:
本来は測定器で行うべきですが用意がありませんのでカメラの機能を使っています。
実撮影時の参考感度とみてください。
他社カメラも波形モニター機能を持つものは、波形を使って、また波形がでないものはヒストグラムやゼブラで測っています。

3200K°のタングステン光を標準反射板にあて、セコニックのStudio Sで照射範囲を大まかに計ります。次にデジタル照度計で細かく計測しながら調整。2000lxの照度を得ます。
(ホントはデジタルスポットメーターがあれば正確な輝度も測れていいのですが、色彩計測《撮影チーフ》を卒業したと同時に壊れたので捨ててしまいました)
本機でゼブラの出現レベルを50%、シャッタースピード 1/60に設定。
50%のゼブラが現れた時点で表示される絞り値をみます。

私的な実測値(デフォルト状態):

ゲイン0dB、2000lx / 50%反射

標準モード F7
拡張モード F10

通常ビデオカメラのカタログ値は89.9%付近の反射率で計測されています。
出荷状態のままだと、どのメーカーのカメラもニーなどの設定もあって50%時と89.9%時の値は同じではありません。
出荷時のまま実測すると各メーカーとも89.9%時のほうが1/3弱、絞れるという傾向を示しますので、
HM650では1/60で標準F8、拡張F11程度 と推測されカタログスペック通りの値でしょう。

【 参考までに昨年テストしたPMW-200もF11を謳いますが、50%時はHM650の拡張モードと同じ値を示しました。90%時はカタログどおりF11。PMW-200は1/2型3CMOSですので、撮像板の余裕分がS/N比の改善に充てられてるようです。PMW-200の公称値はS/N比56dB、どのビデオレベルでの値なのかは公表されていません 】

EBUでの公式テスト値:

反射率90%のコダックグレイカードに2000lxをあてて、100%の輝度となったF値だそうです。
(Gain 0dB、Knee set 100%, Clipping 108%, 反射率100%/2000lx、レートが50なのか60かは不明)
50iなら私の実測値とほぼ同等ということになります。
標準モード F7.5
拡張モード F10.5

(ニーの影響を避けるためにマニュアルでKneeポイントを100%にしているようですね)
この資料(PDF)はこちらからダウンロードできます。さまざまなテストが行われています。
レンズ性能やS/N比に関する実測もあります。


【 EBUは、欧州放送連合(European Broadcasting Union)の略称で、60年以上の歴史を持つ放送局団体です 】

標準と拡張のS/N比:

標準と拡張はちょうど倍違うので、拡張モードにマイナスゲインあり、と考えるよりは屋外用、室内用という位置づけや、拡張は倍増感モードと考えるほうが判りやすいかも知れません。標準モードの設置は高感度化における”小絞りボケ”をなんとかしたい、という理由もあるそうで、内部メニューでAE時のF値範囲設定も出来ます。
普段2/3型を使い慣れているプロカメラマンは「小絞り」という現象にあまり出くわしたことがないので、
その予防だそうです。F値を気にしない人も結構いるんですね。

【 私も2/3型のカメラで小物撮りを行うときはF9.5近くまで絞ることもあります。2/3で実際に小絞りボケを感じるのは経験上ここから上ですので、これ以上いきそうなときは室内でもND入れます。またオープンロケのワイドな自然画ではF8を越えると徐々にダメになってきます。2/3でこれですから、撮像板の小さいカメラは特に気を遣う必要がありますね 】

S/N比に関しては、CMOSのデバイスレベルで50dBを越えているという答えでした。
あとはノイズリダクションの効かせかた次第とのこと。目視による評価をしてほしい。ということですね。CMOS感度も同じコトがいえます。ゲインのとり方次第です。当然ながら標準モードのほうがノイズは少ないです。
この件に関してはEBUの資料を参考にしてほしいとのことでしたので、以下にPDFを抜粋します。

EBUのテストは  the mid-grey (30-60% video level) noise level at 0dB gain is about-50dB in Standard Mode, about -48.5dB in Extended Mode. These are highly creditable figures for a camera in this category. と報告しています。
拡張モード、標準と比較すると案外いいんですね。
” 0dB時、30-60%のミッドグレイで標準は約50dB、拡張は約48.5dB。このカテゴリーの中では立派な数字。” ということです。

尋ねてみたところ、このCMOSはJVCのものではないとのことでした。昨年買収したA社の設計でしょうかネ?不明です。
センサー性能も大事ですが、それから後の回路処理次第で出力映像が左右されます。そのため画像処理エンジンの能力が非常に重要です。
ファルコンブリッドをはじめとする、映像用LSIの見せ所でしょうね。


感度に関する余談:

2000ルクスですが、入射式露出計で使われる単位に換算すると約185フートカンデラとなります。
(1ft-Candela = 10.76Lux)

2000ルクスは現在のカメラ感度からすると、かなり明るい光量です。私がこの業界に入った頃、映画のセット撮影は、この明るさが基準でした。当時フィルム感度がISO100(当時ASA100と呼んでました)でしたから。
この185フートカンデラの入射光を50%ニュートラルグレーにあて、ISO100でネガ濃度を50%付近とするには、1/50のシャッタースピード時、F4となります。
つまりビデオカメラで F11(1/60)というのは、ISO感度でいうとISO800相当 と考えればいいデスネ。

映画の撮影部には馴染みある数字と明るさが、単位を替えてビデオカメラの感度測定にも生き残ってるわけです。

【現在、映画用のカラーネガフィルムは高感度タイプでISO500です。粒状性がシーンにマッチすれば倍くらいの増感は行うので、ISO1000くらいまでが実用域となります。ただイーストマン・コダックは破産申請し後がありません。またFUJI FILMでは、すでに生産中止が決定しているので、もうこれ以上映画用フィルムの感度向上はないでしょう。 フィルムで実感度を設定するときは、まず各種チャートを撮影し、現像所で測定したセンシトメトリーチャートと比較、そして使用するエフェクトフィルターやフィルムの粒状感、作品の調子などを考慮して基準感度を設定します。ばらつく条件が多々あり大変でしたね。また現像するまで正しく写っているか判りませんので、長期の海外ロケではロール尻を切り出し宿舎で現像。狙い通りのネガ濃度になっているか確認したりしていました。すでに今は昔の技術です。それに比べるとビデオカメラはずいぶんと楽になりました 】


レンズ画角とF値:

ワイド端は4.1mm。35mmフルサイズ換算で29mm。ワイド端の開放はF=1.6
望遠端は見ての通り94.3mmで667mm相当です。
最望遠時のF値は3.0。
小口径では、このあたりが限界でしょうね。

望遠時、レンズの解像感は開放(F3.0)ではやや実力が出し切れない様子でF4.5まで絞るとシャキっとしてきます。
4.5-5.6あたりを上手く使いたいデス。

絞りは6枚羽根。 光芒の形を見るためにF22まで絞り込んでいるので画面全体が完全な”小絞りボケ”の様相を呈しています。
これは羽根の枚数を確認するためのものでカメラのせいではありません。ここまで絞ると程度の差こそあれ2/3でも起こりますので、くれぐれも気を付けましょう。JVCの画質責任者の方がいうには、細かい目で見ると1/3撮像板ではF5.6を越えると危険な領域に入ってくる、のだそうです。実撮影時の感覚と一致しますね。


グリップとサーボと電源:

グリップはシンプルで角度変更機能はありません。
カメラマン側から見ると録画ボタンとレックレビューボタン、そしてズームレバーがあります。

ズームのサーボ、マニュアル切替はココ。少し小さめかな。まあ、慣れの問題でしょう。
フロントレックボタンは放送用の他社ショルダータイプと同じ位置に。
ホワイトバランススイッチと間違えると録画が始まってしまいます。
便利だけど、もうひとつ誤操作を防ぐ工夫があるといいですね、と要望しておきました。

カメラバランスからすると、チョット後ろ目ですが三脚用のネジ穴は3/8と1/4を装備しています。

電源スイッチはコノ位置。青いロックボタンを押しながら上に引き上げるタイプです。電源が投入されると、わずかですが放熱ファンの音がします。私の旧Victor機もそうでした。ファンの時間は管理されていてメンテナンス時期を知らせる役目もあります。
オフの位置に(CHG)とあるのは電源オフ時に外部電源を差し込むと、バッテリーのチャージが始まるからです。業務機としては珍しく、本体側にチャージャー機能があります。これは賛否両論あるとおもいますが、キニナル人は別売りの外部チャージャーを使えばいいってコトですね。
モードボタンはカメラとデッキモードを切り替えるものです。

大きな円形のボタンは600と650では色が違います。
ビクターおなじみのデザインですね。

LCDモニター:

LCDモニターですが開くとかなり前方寄りです。
高齢者に優しい作り、ってのもあるんでしょうが、この部分は他社の実用新案や特許がらみで
こうしたレイアウトになったようです。レンズフード前端のほぼ上になります。

パネル左側はメニューにアクセスするボタンと十字キー、キャンセルボタンです。
私的にはココにタリーランプがほしいんだよね。と勝手な要望。
お恥ずかしい話ですが、よく逆タリーやるんです。画面表示なんか見ていないんですね。私。
センターマーカーがきちんと十字なのは基本を抑えていて、嬉しい配慮です。
ここではセーフティフレームなど表示させていませんが、表示機能に不足は感じられません。

写真はありませんが、ビューファインダーはスペック上LCDモニターより解像度が高いです。
外ではLCDが見にくく、カメラマンはビューファーに頼るというフィードバックを受けて、このような仕様になっているようです。
日中晴天光の下ではどんなメーカーのLCDも良く見えませんからね。ビューファー使いましょう。
バッテリーは消費しますが、メニューでLCDモニターとビューファーの同時点灯も可能です。

フォーカスアシストはHD100から搭載されているピーキングに色を付けるタイプ。
この発想はVictorが最初であったように記憶しています。
他社と違うのはボタンを押すとモニターが白黒となるところ。白黒画面にメニューで設定した色が合焦部分にあらわれますので見やすいです。
仕組みを考えれば理解できるのですが、コントラストの低い被写体では判定が難しいので、
開発陣としては、さらに精度を高めたいとのことでした。


メモリースロット:

2つあるメモリースロットは後部左側に垂直に位置。

スロットカバーにロック機構がほしい旨要望。現場でどんな雑な扱いをしているのかバレますネ。
記録用メモリースロットの切替はこのボタンで。
もちろんバックアップ機能などを使っているときは動作しません。

USBホスト:

HM650ではUSBホスト機能があります。

これはカメラ内部にソフトウェアを用意すれば、いろいろなUSB機器を接続し動作させられることを意味します。
USBホスト機能ですから用途は限定されていません。カメラ側にドライバーが用意されるかどうかです。
現在は有線や無線のLANアダプターといったUSB機器に対応しています。
この安価に実現出来る通信機能は欧州では高く評価され、BBCへの納入が決まったようです。
(納入台数は500を越える、と報道にあります)


零細企業的な発想で申し訳ないのですが、850円の無線LANアダプターで宅内のLANと接続、他のPCやAndroid機器からのリモートなど試してみました。
このホームページをおいているサーバーにも接続して撮影したクリップをPUT。 簡単でした。
動作するアダプターはJVCのHPで公表されています。型番が異なるものは認識しないのでご確認を。
(写真はバッファロー WLI-UC-GNM)
クリップなどの転送はしっかりインフラ構築されたLAN構内で使用することをオススメしているのだそうです。

JVCとしては、今後3G/4Gなどの通信機器にも対応する予定で、活用はアイデア次第といったところでしょうか。
内部のCCU関連はもう少し充実させたい、と考えているようです。
小さいアダプターなら装着したままフタを閉められるので、いろいろと便利ですね。

3/22 補足:
収録しながらのストリーミング送信が新ファームで可能になったようです。(4G LTEモデム)
キャリアの問題がありますが、実現すれば報道では大変助かる機能でしょうね。
BBCもこれを見越してということかもしれません。

ハンドル部:

ハンドル前方部にホールド付きレックボタンとズームのシーソーレバーがあります。
最近の小型業務機では標準的な機能となっていますね。

ハンドル上のズームレバー制御スイッチ。

入出力端子群:

後部は、まあ、見れば判りますね。ここのUSB端子はホストではなくデバイスとして動作します。
リモート端子はココ。試したところSony LANCです。
私はLANCのズームコントローラーしか持ってませんのでフォーカスなどの制御が可能かどうかは確認していません。
グリップ前方にあるTC端子。同期用タイムコードのIN/OUT切替式です。
後部端子群の上側面にあるのはヘッドフォン端子とAUX入力。
AUXは音声入力で、主にワイヤレス受信機用途ということです。(ステレオ入力)
謎のネジ穴:

と、その下にあるネジ穴が、理解できました。
ワイヤレス受信機を装着するアダプター用なんだそうですヨ。
(ゼンハイザーといってましたが、合わせて作れば、なんでもOKですね)
日本で発売されるかは不明です。

オーディオ:

LCDモニターを開けるとオーディオ関連設定パネルがあります。

音声レベル設定は簡単には動かない作り。でもテープとか貼っちゃうんでしょうね。キット。
音声フォーマットは、MPEG-2とH.264でリニアPCM 2ch 48kHz/16bit、 AVCHDはAC3 2ch、プロキシーはμ-Law 2chです。

LCDの明るさやピーキング、表示関連のボタンがあります。
後部のAUX端子を使うときはINT(インターナル)ポジションでAUX優先となるようです。
前方の上部には大型のタリーランプ。私はOFFにしたままですが、点灯時はカメラマンから確認しやすいよう配慮。
また前部にステレオ内蔵マイクが備えられています。
パネル裏側のキャノンインプットは少し下向きにデザイン。
プロキシーとAVCHD以外はリニアPCMですので、バランス接続の音声機器を使う限り不満は出ないと思います。

レンズフード:

レンズカバーですね。シャカっと開きます。
レンズ前に着けるエフェクトフィルターなどは少し装着が難しいようなので、ここは工夫が必要でしょう。
フードはココを押して回せば外れます。

AFについて:

先行して発売されたHM600は、オートフォーカスに問題を抱えていましたね。
このことを質問してみました。

AFの挙動については 「JVC社内の評価が甘かった」 と、率直な反省の弁を聞きました。
現在も、かなりの時間を割いて修正ファームを手がけているそうです。
このシリーズカメラ、幸いにして ”プログラマブル” でしたね。
技術の人たちはこのカメラの最大の特徴を活かし、認識した動作不順をデバイスの限界まで直してくるでしょう。
今は少し失点を許した形となりましたが、やがて巻き返しの時がやってくるのではないかな。と思いました。

テストしたHM650は600よりも後発ですので、修正ファームウェアとなっています。(2013年2月7日公開、V0102)
(久々にオートフォーカスのテストをしました。いろいろな条件で最も時間を割いて 【疲】)

とはいえ、完璧とはいえず 動作が一瞬悩む感じもあって、もう少しというところ。
今の段階でも、ワンプッシュのような補助的な使い方ならまだしも、全面的にAFに頼らざるを得ない現場では苦しい、ということを開発陣は十分に認識していました。他社のカメラと比較テストも行っているようで、性能的に肩を並べるだけでなく、ここでも一つ上を狙う姿勢を感じました。

近いうちに修正ファームが公表され、今以上のAF性能になる事は間違いありません。


オートマチックなカメラマン:


放送用のENGカメラでも、オートアイリスのボタン操作を頻繁に行っているカメラマンをみかけます。
露出が判らないんだな、と思います。ゼブラは通常表示されるように設定されているハズです。でも自信が持てない。モノクロビューファーの濃度でも判断できない。
ただし彼が悪いんじゃありません。露出はAEボタンで決定すると教わったか、育てた人も解ってなかったか。要因は色々あるでしょうが、問題は技術者を育成する環境がない、ということなのだと思います。
露出理論を備ず、経験も少なければカメラのもつオート機能に頼らざるを得なくなります。
若い世代は教わる機会が限られているようで気の毒です。

私は仕事柄、あまりオートフォーカスやオートアイリスを使わないので、小型業務用カメラでは普段AF、AEの評価を行なってきませんでした。
今回このAF問題があって初めて知ったのは、AFやAE頼みのプロカメラマンが数多くいるということです。
もちろんマニュアル操作が快適に行えない小型カメラ側にも責任はあるわけですが。

こうしたAF、AE機能を多用せざるを得ない現場が多くあるということは良く理解しています。AFやAEを便利に使いこなすのも今の時代に求められている技術ですね。でもネ。必要のないところで使っていませんか?

私はカメラオペレートに関しては器用さもなく、うまくもありません。そして失敗も多いです。それでもズームサーボ以外のレンズ操作をマニュアルとするのは、映画や放送用ENGカメラなどはマニュアル操作が必須だからです。小型カメラだけを一生扱っていくつもりならいいですが、ステップアップを望むカメラマンなら上流に位置する大型で高級な機材の存在を忘れてはいけませんヨ。大きな機材を扱ってきた人が小型の機材を手の内にするのは早いですが、逆は苦労します。いつまでもAF、AEに頼っていると写真やムービーの基礎も覚えられず、大型機材を扱う仕事は望めなくなりますネ。ひいては自分の為にはならないということですヨ。

レイズの操作性やビューファインダーの性能などが異なるため、単純な比較は出来ませんが、
レンズつきで600万円のカメラには通常AF機能はないですね。手でフォーカスを合わせ、そして送る。
あまりにフォーカスのNGが多いとクビになる。それだけです。
だからレンズなどのマニュアル操作がしっかりできるかどうかを機材評価の一部としてきました。
業務機はプロが使うんだからマニュアルベースの使い方なんだろう。と思ってましたが、人も時代も、そうじゃないんですネ。
今後小型カメラの評価記事を書く時はAFやAEといったオート機能も、ある程度評価の対象にしなけりゃいかんのかな、と思っています。
機能を上手く見極めて、ケースバイケースでオートマチックを使いたいですね。

ただカメラマンなら、きちんとマニュアル操作だけで撮影できることも大事ですヨ。ね。


高倍率ズームの設計とAF:

この機種だけの話ではないのですけれど高倍率ズームのAF制御は大変だと思います。が、
ズームレンズと名乗る以上、画角の変更時にフォーカスやインフの移動はないようにお願いしたいです。
過去にテストした20倍以上の高倍率ズームを持つ機種の中には少なからず中ボケ、引きボケといった傾向があるものもありました。調整に出しても ”仕様” です、では購入してしまったユーザーも納まらないでしょう。

レンズ一体型は私の知る範囲ではPMW-200を除き、ユーザー側にフランジバック調整が委ねられていないですね。
だから出荷時の調整を厳密にお願いしたいところです。
AFとの妥協点を探るためにズームレンズというものが変質してきているように感じるのは私だけでしょうか。
マニュアル操作にまで不具合が及ぶとしたら、AF機能なんかホントに補助的なものでいい感じがします。

HM650のコーデック:

当たり前の結論ですが、
35M/H.264 > 35M/MPEG2 > 24M/AVCHD  です。

35M/H.264は、AVCHDの延長線上に位置します。AVCHDでオプション扱いのリニアPCM音声を除けば、ビットレートが上がっただけという見方もありますが、このビットレートの差は大きいです。 ただし、すでに一眼ムービーなどでは40Mを越えており、ワークフローを重んずるあまり、ややビデオ業界全体が保守的になりすぎた感はありますネ。AVCHDという規格をもう少しスケーラブルにしておけば済んだ話でもあります。

個人的な事情で考えれば 35M/H.264 だけあればいいかもと思いました。ただ4:2:0で50Mモードがほしいデス。
ファルコンブリッドは50Mを出せる実力は当然あるということでした。ちなみにHM650はファルコンブリッドを2つ搭載しています。
ただSDHCだからメディア性能がね、追いついてこないのです。メーカー側の推奨メディア限定でもいいですから、50M達成を期待します、と希望しておきました。

【 50Mbit/sとなると、読み書きの際、常時約6.3Mバイト/秒の速度が必要です。CFや専用カードでは楽勝な転送速度でも、SDHCカードで安定したスピードを出せるモノは案外少ないんでしょうね 】

今のところ、H.264はHM650にしか搭載されていません。

画調は全体的にVictorトーンで、あとは好みがあうかどうかというところです。
他社カメラとの合わせ込みを簡単にできるよう、メーカーサイドでプロファイルを用意出来ないか、と要望しておきました。

JVCでは大きく謳っていませんが、35M/H.264 は、このカメラのセールスポイントです。SonyさんのXAVCコーデックが幅をきかせる前に、もっと宣伝した方がいいように思っています。

ワークフローを重んずる仕事ではMPEG2ということになるのでしょうが、これはポストプロダクションにおける効率の問題であって、画質的には、今やあまり意味を持ちません。 時代が求める画じゃないからです。
同じビットレートのMPEG2と比べるとH.264のほうが水の波紋などに現れるブロックノイズが少ないですネ。前から感じていましたがMPEG2というコーデックはそろそろ終わりではないかと思います。
JVC開発陣は次世代コーデックであるH.265の研究も進めていて、こちらはH.264にたいして約2倍の圧縮効率が得られます。すでに4枚のSDカードへの分割記録というアイデアで超小型4KカメラをリリースしているJVCですが、4K、8K分野でも興味あるカメラを開発してくれるかもしれません。

私の永眠機材のなかで唯一のVictor機HD100は、ずいぶん古いカメラですが、HM600シリーズとは、お互い共通するトーンを感じるところがあります。
【 HD100の開発時に参考としたのはIKEGAMIのカメラだったようです。古いですがスキントーンの美しい79EとかIKEGAMIには一世を風靡した名機がありました。 HD時代でも79の型番はまだ残っていて、この辺りをリファレンスとしたのでしょう 】

新世代のHM650では、従来のトーンを活かしつつも現代にマッチするように、全体的な画調がリファインされているようでした。

時代は遷っても自社カメラのトーンは守る。 これもJVCの美学の一つかもしれません。


参考資料として実写映像から切り出し。 (PhotoshopでJpeg変換及び縮小)

ワイド端、ND 1/64、F4.5、フォーカスとアイリスはマニュアル、標準モード0dB、35M/H.264、60i
ホワイトは5600K°固定で、太陽はやや色温度の下がった状態。雲による若干の拡散があります。

全体的には柔らかく端正な描き方ですが、斜めのラインがやや気になります。
撮像板は画素ずらし等を用いないフルピクセルCMOS3板。
いくつかの業務用カメラをテストしてきましたが、ピクセル等倍でみるとCMOSセンサーの描き方は他メーカーとは大きく異なっているようでした。
ドコのセンサーでしょうね。チョット謎です。

初期ロットのテスト機と思われるので、その後の量産品とはセンサーの傾向が異なっている可能性もあります。
あとは、ご自身の確かな目で確認されることをオススメいたします。

大手町、和田倉堀から改築なったパレスホテル方面
ニーはオート、クリッピングレベルは108% (どちらもデフォルト状態)

まとめ:

SD時代にはマニアックなファンが多かったVictorのショルダータイプですが720PのHD100で開発の方向を変えました。
HD時代のカメラと画作りを始めたのはいいんですが、日本では720Pでショルダーという”売れない”2重の足かせが重かっただろうと思いますネ。
その低迷からフルHD時代で主導権を取り返すために投入されたのがHM650とHM600ということになろうかと思います。
これでまた昔のファンが戻ってくればJVCには幸いですね。

現在の700シリーズなどはレンズがフルマニュアル可能で、潔くよくていいですね。
海外では(特にラテン系の国々)人気があります。

いずれHM650の技術すべてが700シリーズに引き継がれることでしょう。
そうなったとき、 600シリーズか700シリーズか、仕事によって使い分けるようになるでしょうネ。

お忙しい中、時間を割いてくれたJVC KENWOOD の皆様、勉強になりました。感謝します。
2013/03/20
 
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