P48 to AB12アダプターの制作

ファンタム48VをパッシブでAB12V(Tonader)に変換するアダプターがあるのを知ったのは10年以上前。ちょうどロケ用ガンマイクMKH-416の電源供給がファンタム48Vに遷りつつある頃でした。

長らく映画の音声収録に使われてきたAB12Vを使用するコンデンサーマイクは、今やSennheiser 416TとSchoepsの一部のみになってしまいました。今後、皆さんが新たにマイクを購入するときは通常ファンタム48Vのものを選択すると思います。

というわけで、AB12V電源(Tonader)は死語になりつつあります。もう映画・放送関係の人しか解らないかもしれません。

ゼンハイザーMKH-416の電源供給がファンタム主流になったのは、ここ十数年あまりのことです。

ファンタム48Vというのは、そもそも有線電話の規格らしく、映画の全盛時、野外ロケではなかなか手に入れにくい電圧だったことは想像できます。そこでフィルムカメラの電源は24Vや12V(13.8V)ですし、当時、音声収録に使用されたナグラ(NAGRA-Kudelski)というポータブルテープレコーダーが単一電池12本(18V)ですから、 降圧して12Vでの供給も理にかなったモノだったかもしれません。
私がこの業界に入った頃は、006P電池を使った416Tや816T専用のAB電源(AKB11等)を使用している録音部さんが多かったですね。ナグラからも供給できたハズなのですが、これは少数派。この専用電源はパッドやローカットが装備されていて、現場でのイコライジングはこれでOKという録音技師も多かったようです。この電源で使い古した006Pを2個対向でショートさせ、冬のロケで冷えきった手を暖める録音助手さんもいました。寒い中、ブームを振り続けるのは大変なことです。でもこの経験が良い耳を育てることになります。


416のようなロケ収録がメインのマイクにとって、現場で手に入れやすい直流12ボルトという電圧は大変便利だったのですね。
P48とAB12(Tonader)の給電方法の違いはコチラのページをご参照ください。
ファンタム12Vとは給電方法が異なりますのでご注意を!

MKH-416内部では直流電圧をMHz帯に置き換えた「RFバイアス(Radio Frequency)」と呼ばれる方式をとるので、P48とAB12(Tonader)方式による音質の差はない、ということになっています。

しかしながら映画での長い実績は、電源供給形態による「音質の差」を感じる人たちがいたコトを示しています。オーディオ愛好家はファンタム48Vの高い直流電圧のほうがコネクター接点の安定度が高まるため、高音質が期待できるという人もいます。しかし映画のサウンドミキサーの中には、AB電源によるヴォイス領域の品位を好む人もいます。(一長一短でしょうか。私のような駄耳の持ち主では判りませんが、日々人の声を聴いている人には違いが判るのだそうです。映画はなんといっても台詞ですからね)




このMKH-416というガンマイク、名機だけあって、なかなか壊れません。
逆にいうと、壊れない故に名機たりえた、といえます 絶縁が厳しい多湿・雨天環境でも性能を保てるのは、低電圧高周波を使った「RFバイアス方式」のお陰ということもあります。
当然少しづつ劣化はしているのでしょうけれど、悪天候や手荒い扱いにも耐えます。
そんな訳で古い規格であるはずのAB電源用416Tがまだ多くのプロダクションに残っています。

ロケ用のポータブルミキサーは、こうした歴史的経緯からAB電源に対応するので普段問題ないですが、ゼンハイザー416TをAB電源を装備しないコンソールやUSBサウンドインターフェイスにつなげたい時、このようなファンタム48VをAB12Vに変換するアダプターが一個あれば重宝します。

有名どころはコネクター型で小さく、使い勝手もいいんですが、少々お高いのです。(日本製で実売18,000円程度、海外製で6,000円+送料+輸入諸経費)
日本製(日本光音電波製)はアキバのトモカ電気(ラジオ会館2F店)に展示・販売されています。


当然、自分で作れば安価に上がるわけですが、
以前自作したときは、ノイズの問題が処理しきれず、上手くいきませんでした。

ずいぶん時間も経ったし、XLR用の穴開けちゃったケースも残っているので、もう一度やってみようと思ったのがコトの始まり。
 
416はガンマイクなのでそれなりのクセはあります。が、人の声に限っていうと、いい音です。
ほおって置くのももったいないし、うまく活用できるようにアダプターをつくってみました。

以前の回路図は捨てちゃったので、ココの回路図を参考にしました。
http://www.uneeda-audio.com/phantom/t-power.htm
Rick Chinnさんのコンバータ回路図  (少し定数を変え、小さなコンデンサを追加してあります)
極性マークが付いていませんが、大きな容量のコンデンサ3つは63Vの電解です、48P側が+になります。
48Vを降圧、ツェナーダイオードで約12ボルトを得たうえで、AB電源方式へ供給形態を整えます。
48P側の抵抗が少し大きいようには思いますが、この通りにやってみます。

電気回路的な工作はさほど難しいモノではありません。
基板に回路図そのままを再現し、ツェナー電圧が正しくでるかチェック
参考までに述べておきますと、メーカーの市販品は小型DC-DCコンバータを使ったもっと高級な回路構成です。トランスも使っているかもしれません。
今回は、あくまで簡易型であるということを前提に組み上げます。

ケースの高さ制限で普段使わない背の低い電解コンデンサを使ってます。

これで高さが稼げたので電解は全部Rickさんのオリジナル容量(100u/63V)にしました。

 
で、電圧はどうよ?
 
まあまあですね

ベリンガーのミキサーからファンタム48Vをとって無負荷状態で 11.61V とでました。


12Vのツェナーダイオードを使っているので、若干ノイズが心配です
 
電圧と一緒にノイズが乗ってしまえばオシマイで、この回路に意味はありません。
ツェナーダイオードというのは、原理からするとスイッチングような動作してるんですね。
これを知らずに前回制作したので、ノイズが抑えきれず挫折しました。
 
この回路では大きなコンデンサでノイズを押さえ込む設計のようです。
いちおうヤマハの小さな卓上ミキサーからもファンタムを供給してみます。
 
既成される電圧は同じようですね
あたりまえか
 
416Tをつないでみます。
10.47Vにドロップ
AB電源はそれほど電流はくわないのでしょうけど、しっかりドロップします。
負荷を考えれば、この程度のドロップはあるかもしれません。
 
で、音はどうよ?
 
音はツェナーの雑音も感じられず、いつもの416Tの音。
やっぱりいい音です。
ゼンハイザー純正のAB電源アダプターでの基準は12V +-1Vです。
これは無負荷時のことのようなので大丈夫。

USBサウンドインターフェイス、デジ(現Avid)のMbox2miniからもファンタム48V供給してみました。
無負荷で 11.57V です。
ファンタム48Vは無負荷では正確に出ています。
PCのUSB5Vから P48に昇圧と考えたらいい出来です。
これで 416Tをつなぎます。

10.41V でした。
 
音もツェナーによるノイズも問題ありませんでした。
ま、少し音の張りが足らない感じがするのは、アダプターの挿入損失でゲインが落ちてるからでしょうか。
 
とりあえず 実用にはなるかな。
 
負荷時の電圧ドロップを考慮すると、もう少し電流がとれるツェナーダイオードに替える手もあります。
ただツェナーダイオードというのは目一杯お仕事しているほうがノイズは少ないようなので、
これでいいのかも知れません。
 
おしまい
 

2015年4月  P48 to AB12アダプターの制作


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